歯と健康寿命の意外な関係

人生100年時代と言われる現代において、単に長生きするだけでなく、健康で自立した生活を送る「健康寿命」を延ばしていくことが重要な課題となっています。
実は、元気で健康の毎日を送るための鍵を握るには「歯」が関係していることをご存知ですか?
「たかが歯の健康でしょ?」と思うかもしれませんが、歯の状態と全身の健康、さらには寿命までが密接につながっていることが、科学的に証明されつつあります。
この記事では、歯と健康寿命の密接な関係について、様々な研究データや具体的な事例を交えながら詳しく解説します。 
健康寿命とは?
健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を指します。
2019年の日本の平均寿命は、男性が81.41歳、女性が87.45歳でした。
健康上の問題で日常生活に支障なく過ごせる期間を示す健康寿命との間には、男性で約9年、女性で約12年の差があります。
(参考:厚生労働省eヘルスネット「平均寿命と健康寿命」)
平均寿命と健康寿命の間には差があり、この差は日常生活に制限のある不健康な期間を表しています。
健康寿命を延ばすことは、個人がQuality of Life(生活の質)を高く保つだけでなく、社会全体の医療費や介護費用の抑制にも繋がります。 
歯と健康寿命の関連性を示すデータ
数多くの研究が、歯の残存数と健康寿命の間に明確な関連性があることを示しています。 
以下がその一例です。
歯の数が92日も寿命を延ばすってホント?
東北大学大学院歯学研究科の調査によると、20本以上の歯を持つ高齢者は、歯がほとんどない高齢者と比較して、健康寿命が長く、要介護期間が短いことが明らかになりました。
特に85歳以上では、20本以上歯がある人は、そうでない人に比べて健康寿命が男性で92日、女性で70日も長いという結果が出ています。
(参考:歯が20本以上の高齢者 健康寿命92日長く、要介護55日短い(0本に比べて)) 
歯周病は「全身の病気」の引き金?
歯ぐきから血が出る、歯がグラグラするなど…そんな歯周病は、ただの口の病気ではありません。
病菌が血管に入り込むと、糖尿病、心臓病、脳卒中などの全身疾患の悪化に関係していることがわかっています。
これらの疾患は健康寿命を短縮する要因となるため、歯の健康を維持することは、これらの疾患の予防にも繋がるとも言えるのです。
(参考:厚生労働省eヘルスネット「口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連」) 
よく噛むことは「脳トレ」になる!
食事でよく噛むことは、脳の記憶を司る「海馬」という部分を刺激されることで、認知症予防につながります。
また、脳への血流が促進され、認知機能の維持に役立ちます。
逆に、歯を失って噛む力が弱まると、脳への刺激が減ってしまい、認知症のリスクが高まるというデータもあるのです。
なぜ歯の健康が全身の健康に影響するのか?

歯の健康が全身の健康に影響するメカニズムは多岐に渡ります。
栄養摂取への影響
歯を失うと、食べ物を十分に咀嚼できなくなり、栄養バランスが崩れる可能性があります。
特に高齢者では、栄養不足が筋力低下や免疫力低下を招き、健康寿命を短縮する要因となります。 
口腔内細菌の影響
歯周病菌などの口腔内細菌は、血管を通じて全身に運ばれ、様々な疾患を引き起こす可能性があります。
例えば、歯周病菌が心臓疾患の発症に関与していることが示唆されています。
(参考:日本臨床歯周病学会「歯周病が全身に及ぼす影響」) 
誤嚥性肺炎のリスク
噛む力や飲み込む力が低下すると、食べ物や唾液が気管に入りやすくなり、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
誤嚥性肺炎は高齢者の死亡原因の一つとなっており、歯の健康維持は、このリスクを低減する上でも重要です。 
お口のささいな衰え「オーラルフレイル」

「最近、滑舌が悪くなった気がする」「食べ物でむせることが増えた」…もし、そのような心当たりがあるなら、それは「オーラルフレイル」のサインかもしれません。
オーラルフレイルとは
オーラルフレイルとは、「口腔機能の衰え」のことです。例えば、滑舌が悪くなる、食事がこぼれやすくなる、食事中にむせることが増えるなどの症状が出てきます。
これを放置すると、体の衰え、つまり「フレイル(虚弱)」へとつながり、健康寿命を縮めるリスクがあることが分かってきました。
「歯の健康でしょ?」と思うかもしれませんが、この段階で対策を始めることが、将来の健康を守る第一歩となります。
健康寿命を延ばすための歯のケア

健康寿命を延ばすためには、日々の適切なケアと定期的な歯科受診が不可欠です。 
歯の健康は、ご自身の日々の少しの努力で守ることができます。
未来への投資だと思って、頑張っていきましょう。
毎日の歯磨き
適切な歯磨きは、虫歯や歯周病の予防に最も重要です。
歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスなども活用し、歯垢を徹底的に除去しましょう。 
食生活の見直し
バランスの取れた食生活は、歯の健康維持にも繋がります。
特に、糖分の摂り過ぎは虫歯の原因となるため、注意が必要です。 
定期的な歯科受診
定期的な歯科検診とクリーニングは、虫歯や歯周病の早期発見・早期治療に繋がります。
また、歯科医師による適切なアドバイスを受けることで、より効果的な口腔ケアを行うことができます。 
噛むことを意識した生活
食事の際には、よく噛んで食べることを意識しましょう。
噛むことで唾液の分泌が促進され、口腔内の自浄作用が高まります。
また、噛むことは脳の活性化にも繋がります。
日本歯科衛生士会では、「食べ方」を通した食育の推進 – カミング サンマルという活動を促進しており、1口につき30回噛むことを推奨しています。
生涯を通じた歯の健康管理を

歯の健康は、単に口の中だけの問題ではなく、全身の健康、ひいては健康寿命に大きく影響します。
歯を守ることは、健康寿命を延ばすことにつながります。
さらに詳しく知りたい方は、当院の『デンタルサイクル』の記事もご覧ください。
日々の適切なケアと定期的な歯科受診を習慣づけ、いつまでも健康な歯で、豊かな人生を送りましょう。 
この記事が、歯と健康寿命の関係についての理解を深め、皆様の健康増進に役立つことを願っています。 
ご質問やご不安な点がございましたら、お気兼ねなく当院までご連絡くださいませ。
予約空き時間 〜初めての方〜

監修医
足立 院長
・平成31年大学病院 勤務
・アーバン歯科・矯正歯科 大宮ラクーン院 院長
・口腔外科学会員
得意科目は、
・審美〈セラミック矯正やダイレクトボンディングなど〉
・入れ歯〈大学病院と同じ様な精密な入れ歯製作可能
・インプラント
・親知らずの抜歯等
